ニュースやビジネスの現場でよく目にする「稼働率」という言葉。
一方で、家具やおもちゃの説明に「可動式」という表現も出てきます。
どちらも「かどう」と読みますが、実はまったく違う意味を持っています。
さらに、似た言葉として「稼動」という表記も存在し、混乱する人が多いのも事実です。
「稼働」「可動」「稼動」――。
見た目はそっくりですが、使い分けを間違えると「この人、言葉を正しく理解していないな」と思われてしまうことも。
この記事では、身近な例を交えて、それぞれの違いを徹底的に解説します。
結論
- 稼働(かどう):人や機械・設備が「実際に動いて仕事をしている」こと
- 可動(かどう):物や仕組みが「動かすことができる」状態にあること
- 稼動(かどう):意味は「稼働」とほぼ同じだが、表記としては「稼働」が一般的
つまり、ポイントは「動いて仕事をしているか」か「動かせるかどうか」です。
稼働とは?
「稼働」は、漢字のとおり「稼ぐ+働く」で成り立っています。
「実際に動いて仕事をしている」ことを表します。
- 工場の機械が実際に動いて生産している
- システムが正常に稼働している
- アルバイトがシフトに入り稼働している
このように「実際に働いている」「役割を果たしている」状態を表すのが「稼働」です。
例えば「遊園地の観覧車」。
電源が入ってお客さんを乗せ、ぐるぐる動いているときは「観覧車が稼働している」と言えます。
逆に観覧車が止まっていて、お客さんが乗れないなら「稼働していない」状態です。
例文
- 工場のラインが24時間稼働している。
- サーバーが無事に稼働している。
- 本日は10名のスタッフが稼働しています。
ビジネスや工業の場面で特によく使われるのが「稼働」という言葉です。
可動とは?
「可動」は「可(できる)」+「動(うごく)」から成り立っています。
つまり「動かすことが可能」「動ける仕組みがある」という意味です。
実際に動いているかどうかは問いません。「動かせるかどうか」だけを表す言葉なのです。
ロボットのおもちゃを思い浮かべてください。
腕や足の関節を自由に動かせるなら「可動部分が多い」という表現ができます。
でも実際に動かしていなくても、「動かせる仕組みがある」だけで「可動」という言葉が成り立ちます。
例文
- この椅子は高さを調整できる可動式です。
- フィギュアの腕は可動部分が多い。
- この棚は可動棚になっていて、好きな位置に変えられる。
また、人の体についても「可動域」という表現で使われます。
「肩の可動域が広い」=肩を大きく動かせる、という意味ですね。
稼働率と可動率の違い
似ているけれど大きく違うのが「稼働率」と「可動率」です。
- 稼働率:設備やシステムが「実際に動いて仕事をしていた割合」
- 可動率:設備や機械が「動かせる状態にあった割合」
工場の例
機械が実際に製品をつくっていた時間の割合 → 稼働率
機械は動かせる状態だったが、意図的に止めていた時間も含める → 可動率
つまり、稼働率は「実働の割合」、可動率は「使える状態だったかの割合」と覚えると分かりやすいです。

学校のブランコを想像してください。
友達が実際にブランコに乗って遊んでいた時間の割合 → 稼働率
ブランコが壊れていなくて、いつでも遊べる状態だった時間の割合 → 可動率
この違いをイメージすると一気に理解しやすくなります。
使い分けのチェックリスト
- 実際に動いている/働いている → 稼働
- 動かすことができる仕組みがある → 可動
- 公式文書・報告書 → 基本的に稼働を使う
日常でも「これは今働いている?」「動かせる?」を意識すると、自然に使い分けられるようになります。
よくある間違い
「稼働」と「可動」は読み方も同じなので、実際の現場では間違えられることがとても多いです。
特に以下のようなケースは要注意です。
1. 「可動中」と書いてしまう
機械やシステムが動いている状態を表すとき、正しくは 「稼働中」 です。
誤り:このシステムは現在可動中です。
正しい:このシステムは現在稼働中です。
「可動」は「動かすことができる」という意味なので、すでに動いている状態を表すには使えません。
ここを混同すると、文章の信頼性が下がってしまいます。
2. 「稼働率」と「可動率」を取り違える
これも非常によくあるミスです。
稼働率 → 実際にどれくらい動いて仕事をしていたか
可動率 → 動かせる状態にあった時間の割合
例えば、工場の報告書で「可動率95%」と書いたつもりが、本当は「稼働率」を伝えたかった、というようなケース。
数字の見え方が大きく変わるため、誤用すると大きな誤解を生む危険があります。
3. 「稼動」を多用する
「稼動」という表記は辞書にも載っているので誤字ではありません。
しかし現代では 「稼働」 が主流で、官公庁や新聞でも「稼働」で統一されています。
そのため、報告書やビジネスメールで「稼動」と書くと、「この人は古い表記を使っているな」と違和感を与える可能性があります。
迷ったときは「稼働」と覚えておくのが無難です。
4. 「可動」と「移動」を混同する
「可動式」「移動式」は似ているようで違います。
可動式 → 動かせる仕組みになっている(例:椅子の高さ調整)
移動式 → 位置を変えることができる(例:キャスター付き机)
「可動机」と「移動机」を混同すると、製品の特長を正しく伝えられなくなります。
カタログや商品説明では特に注意が必要です。
5. 「稼働」と「活動」を混同する
日常会話では「活動」と「稼働」を混ぜて使ってしまうこともあります。
稼働 → 機械や人が働いている状態
活動 → 人や団体が行う行為そのもの
例:
〇「今日はボランティア団体が稼働していた」
×「今日はボランティア団体が活動していた」
この2つは字面が似ているので、無意識に混同してしまいやすい言葉です。
よくある間違いのまとめ
「稼働」と「可動」の混同
本来「稼働中」と書くべき場面で「可動中」としてしまう。「稼働率」と「可動率」の取り違え
「実際に動いていた割合」と「動かせる状態だった割合」を混ぜてしまう。「稼動」の多用
意味は同じだが、現代では「稼働」が一般的。ビジネス文書では「稼働」に統一するのが安心。「可動」と「移動」の混同
「可動式(動かせる仕組み)」と「移動式(位置を変えられる)」を取り違える。「稼働」と「活動」の混同
「人や機械が働く(稼働)」と「人や団体が行う行為(活動)」を混ぜてしまう。
このように整理して覚えておけば、「どの言葉を使うのが正しいか」をすぐに判断でき、文章や会話の正確さ・信頼性がぐっと高まります。
おまけ:「稼動」について
既にご紹介していますが「稼動」という表記も存在します。
意味は「稼働」とほぼ同じで、辞書にも両方が掲載されています。
しかし近年では「稼働」の方が一般的で、公文書や報道でも「稼働」に統一されることが多いです。
「稼動」は誤りではありませんが、迷ったときは「稼働」を使うのが安心です。
まとめ
- 稼働=実際に動いて仕事をすること
- 可動=動かせる構造や状態であること
- 稼動=意味は稼働と同じだが、表記は「稼働」が主流
同じ「かどう」でも意味は大きく違います。
「かどう」という言葉を使うときは、「今動いているのか」「動かせるのか」を意識してみましょう。
文章を書くときや会話のときに、この違いを知っておくと相手に正しく伝わり、信頼感もアップします。
次に「稼働」「可動」という言葉に出会ったら、「これは実際に動いているのかな?」「それとも動かせる状態のことかな?」
と考えてみると、すぐに違いが分かるようになりますよ。